働く者の心得

①諸君はリサイクル屋に入社したのではなく「フードビジネスプロデュース」の会社に入社したのである

テンポスで働いている人に、何の仕事をしているかと聞くと、「中古の厨房屋だ」と答える人もいれば、「リサイクル屋」だと答える人もいる。中古厨房屋だと思っている人は、修理再生して売るのは、冷蔵庫やシンク、ガスレンジなどの厨房機器だけ。一方で、リサイクル屋だと考える人は、厨房機器だけでなく食器から鍋・窯・包丁、ディスプレイ用品までも引き上げて再生して販売すると考える。ビジネスは、誰に何を売るのかによって事業領域は変わる。

では、テンポスの事業領域は何か。我々は飲食店が健康で長生きできるように診察するドクター(医者)として、病気にならないように日頃から健康を見守るトレーナーでありたいと考えている。売上が悪い店には、事業再生の道を拓き、繁盛店には明るい未来に向かって事業発展する応援をする。この2つの側面から支援していく。これがテンポスの事業領域である。

食器を陳列していても、接客をしていても、何をしていても常に頭の中で、テンポスの事業領域は何か、その中で自分はどんな専門家を目指して、自分がどんな人生を送っていきたいか考えながら仕事に取り組んでもらいたい。

②全てを自分で決める事、人のせいにするな

もっと生活を良くしたい、もっといい人生を過ごしたいと思っている人の中には、「国が悪い」「行政の対応が悪い」「学校はこうあるべきだ」等、批判的なことを言う人がいる。批判をしたからと言って生活が良くなるわけでもないのに、そこから脱却できない人が多いのは、自分が大衆の意見を代弁しているようで、いい気持になっているからだ。もっといい人生を過ごしたいと思うなら、そんな批判をする前に、今日一日を充実して過ごすことができたかを考える方がよっぽど大事である。

一日を充実して過ごせる人は、一日一日ステップアップして、自分の人生を良いものに仕上げていくことができる。そんな人たちの根底にあるのは、「自分の人生は自分で作る」という考え方だ。「何々のせいでこうなった」等と、人のせいにする考えは無い。そもそも、「何々のせいでこうなった」という考えの根底にあるのは“動機”である。貧乏のせいでこうなったと批判的に考える人と、貧乏をバネにして頑張った人、それぞれ動機は同じだが、そのあとの結果が違ってくる。いい結果にするも悪い結果にするも、結局は自分次第だということだ。

③我慢する・辛抱する・工夫するのをいつも頭において挑戦し続けろ

社会で一人前になるためには、新卒でも中途社員でも「我慢する」「辛抱する」「不平を言わない」をすることが第一条件である。今の自分の能力の範囲で楽しみながらやるやり方では競争社会で生き残れない。

しかし、「我慢する」「辛抱する」「不平を言わない」ができたからと言って幸せになれるわけではない。なぜなら、どれも耐えることばかりで、明日に向かって生きていくということをしていないからだ。

明日に向かって、明るい未来を創るためには、「我慢する」「辛抱する」「不平不満を言わない」ことは絶対条件だけど、これに加えて「工夫改善していく」ということが大事なことである。

④いつも目的をもって仕事をすること(人生も同じ)

「いつも目的を持って仕事をする」とは、仕事だけに限らず、生きていく上でも、ものすごく大事なことである。ふと、「何のためにやってきたのだろう」と思う時があるのは、「自分の人生を作っていく」という考えが頭に無かったからだ。

世の中、毎日、真面目に一生懸命、不満を言わないで生きている普通の人がほとんどだ。何のためにやるのか、どんな状態になれば人生の合格か、この考えを持って勉学にも仕事に取り組んで欲しい。

⑤指摘するだけ、言うだけの人間は要らない。自分がリングに上がれ

世の中の立派な経営者を批判できるのは、その経営者の子供くらいである。しかもその批判は、年端のいかない小僧でもけっこう的確でズバリとくるものがあるんだ。だけど、批判するあなた達は一体何が出来るのかということを言いたい。正しい批判というのはバカでもできるよ。

50歳、60歳になっても批判することから抜け出せない人は、的確な批判をする自分は立派なんだと勘違いしているからだ。さらに進んでいる人は、指導助言までしてくるんだけど、これこそいらぬお世話である!

⑥300億の会社に入社したのではない。これから1000億になる会社に入社したワクワク感を忘れるな

会社に安定を求めて入社してくる人は多い。俺が、自分の子供に、「父ちゃんの会社に来い」と言ったら、3人とも「嫌だ、安定していない」と言って、子供のくせに安定を求めるのかと思ったこともある。世の中の風潮から、安定を求めることは仕方がないけど、そんなもの、もっと高齢になってからでもいいじゃないか。20歳や30歳の時から、安定を求めてどうするんだ。会社に入ったなら、この舞台の上で自分の人生を作るんだと思うこと。そして、そういう人たちと一緒に素晴らしい会社を作っていこう、そんなワクワクした気持ちを持つこと。そしてその気持ちはいつまでも忘れてはいけないよ。

⑦自由競争と市場原理の中にいる会社で働いていることを忘れるな

自由競争の中で生きていられるのは、努力した結果に対して、お客様が評価してくれているからだ。「努力を評価してくれない」と恨めしそうな顔をする人がいるが、前よりも良い商品を作ったとしても、他社がそれ以上にグレードの高い商品を作れば、お客様は他社の商品を喜んで使う。あなたが一生懸命頑張ったのは分かるが評価はできない。

だけど、そこで悔しいと立ち止まってはいけない。「自分の努力よりももっと知恵のある人が出てきたか。じゃぁ、もう一回やり直そう」と思って、また挑戦した方がよっぽど人生は明るい。頑張ったから評価して欲しいと子供みたいなことを言ってはいけない。

⑧額に汗して油で汚れて働く百姓テンポスが一番偉いが評価が低い時もある

働き方改革とやらで、額に汗して働くとか、労を惜しまないとか、泥まみれになって働くとか、そんな働き方は周囲からよく思われなくなった。反対に、臨機応変に仕事をする“目端の利くタイプ”が現代のスピード社会には重宝される。しかし、この“目端の利くタイプ”とは、効率的に仕事をしているように見えるが、実際はひたむきに働かず、やみくもに効率を追求しているだけという人も多い。大事な下積み時代に「積み上げる」ことが疎かになるから、40歳、50歳になっても、口だけでたいした結果を出せない人になってしまう。本物になりたければ労を惜しまずコツコツと何かを積み上げる経験を避けてはいけない。

⑨損得勘定で働くな、損得勘定を持ち出すな

額に汗して働くことが嫌いな人は、いかに手をかけないで効率的に成果がでるかを考えて動く。そういう人は目端も利くから、仕事を任せれば、短期で成果も出してくれる。しかし、働く動機が、自分の収入を上げるため、評価を得るためなら、そんな仕事は今すぐやめなさい。仕事は成果を出さないといけないものだから、効率的に働くことは正しい。しかし、損得勘定で仕事をする人は、その姿勢が上司には丸見えだ。「あ、こいつは評価のために動いているな」と分かるから、上司は面白くない。また、お客様に喜んでいただくという観点ではなく、自分が損をしないように、自分が得をしたいがために仕事を続けていると、いつか化けの皮がはがれてお客様は離れていくよ。

⑩テンポスの教育とは更に重い荷物を背負わせることである

一生懸命働く部下には、新しい仕事を任せて、期待するけど、たいていの人は辛くて辞めてしまう。なぜなら、その人は一生懸命働くけど、「事業を大きくするぞ」と思って仕事をしていない。見かけには一生懸命働いていても、将来に向かって仕事に取り組むエネルギーが溢れているわけではないからだ。

一方で、仕事がもの足りなくてよそへ逃げてしまう人もいる。目標に向かって高いステップを目指すとか、志に向かって自己改革をするエネルギーの塊のような人は、負荷が無いと仕事が面白くない。成長のチャンスが無いのはストレスになる。つまり、人を育てるときは、ちょっとずつ負荷をかけるべきか、たくさん負荷をかけるべきか見極めることが重要だ。しかしどんなタイプの部下であっても、出来る範囲の中で仕事をやらせているだけでは能力はアップしないよ。さらに重い荷物を背負わせることが教育である。

⑪人の改革よりも自分の改革が第一と心得よ

良い夫婦関係を築いている人と、そうでない人の違いは、相手に要求をしているかどうかだ。「ああして欲しい」「こうして欲しい」と要求するから、相手も嫌になって関係が悪くなっていく。だから夫婦関係を良くしたいなら、まずは要求を捨てる事。そして自分を変えることだ。自分が変われば、相手もおのずと変わっていく。夫婦関係と同じで、会社で部下に要求するのは一番早くて楽チンだけど、要求しても部下は簡単には変わらない。だから、リーダーは、部下が自分から変わりたくなるような仕掛けを作っていく。

飲食店経営者も同じで、お客さんが来ないのは、自分のやり方が悪いとまずは思うこと。お客さんが喜ぶ料理に作り変える。経営者やリーダーが人を育てたり、商売をうまくやっていくためには、何をおいても自己改革から始まるということを忘れないでくれ。