道場破りに挑んだ「よそ者」たちの声
6月25~27日の2泊3日で、第49回テンポス道場が開催されました。17人が参加し、全員合格で無事終了。挨拶審査、暗記審査、解釈審査、素読審査、決意表明の5つの厳しい審査に合格しなければならないこの研修は、精神的にも限界ギリギリまで追い込まれるまさに「道場」。傍から見るとその雰囲気は異様に見えるのかもしれません。そこで今回は、「よそ者」というと失礼ですが、生粋のテンポス人とは少し違う視点で見ることができそうな参加者に感想を伺いました。
去年の9月にテンポスグループ入りしたヤマトサカナ社長の清水一成さん、ぐるなび出向社員でテンポスホールディングス広報課に勤務する西山正紀さん、そして韓国の京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)市で生まれ育ち、去年の5月からテンポスバスターズ川崎店に勤務している劉承桓(ユ
スンファン)さんの3人です。
自分自身と向き合う2泊3日
清水一成さん
プロフィール
しみず かずなり
ヤマトサカナ株式会社取締役社長。1969年生まれ。
「去年の9月27日にテンポスグループに入って約10か月。今回は、私を含めてヤマトサカナから3名が参加しました。ヤマトサカナとしては初めてのテンポス道場です」と語るのは、ヤマトサカナ社長の清水一成さん。
ただ、ほかのグループ企業から参加した人たちと比べると、あきらかに準備不足だったと振り返る。「皆さんしっかりと暗記していたのに、私たちはそこでまずつまづいてしまい、初日の夜、研修担当の仁平さんに、このままでは明日帰っていただくことになりますと言われてしまう体たらくでした。次回からは、しっかり準備して参加するよう伝え、フォローしてまいります」
参加して感動したことはありましたかという質問に対しては「サポートメンバーのすばらしさ」という答え。「私みたいに準備不足でなかなか合格できないダメ門弟にも、決して嫌な顔せずに付き合って、とことんサポートしてくれました。合否の判定も決してブレない。人によって基準が変わるようなことも全くありませんでした。テンポス精神が浸透してるんだなと、感動しました」
テンポス道場に参加することで、私たちは、同じ価値観で、同じ基準で、同じ船に乗る。それがテンポスの強みになる。
「今回参加して、森下会長やテンポスの幹部の方々の話していることの意味が改めてわかった気がします。森下会長がおっしゃってることは、首尾一貫しているとも思いました。テンポス精神17ヶ条から全くブレてません」という清水社長の言葉が、それを証明している。
「なるほどなと思ったのは第十三条の0.99の法則。1.01と0.99の差は少しだけど、それが続くと大きな差になると言う話です。一発当てようと考えるのでなく、小さなことをしっかりと積み重ねていくことが大切なんだと改めて気づかされました。百姓テンポスですよね。
十二条のいてての法則にもつながります。これもつまりは積み重ね。やだなと思う時がつまりはいてての位置なんだなと。そこを頑張らないと力がつかないんですよね」
テンポス道場は、自分自身を見つめる時間でもあったと清水社長は語る。
「お題があって、考えながら振り返る。限界を超えると言うのは、つまり自分を理解することでもあるなと。2泊3日の期間中、日中の携帯使用禁止もよかった。携帯を使ったりしたら、きっと内面に向いてた意識が外に向かい、これほど深く自分と向き合うことはできなかったと思います。研修は大変ですし、素読の審査会場の部屋に遅れて入ったときには、その重い雰囲気に一瞬たじろいだほど。客観的に見ると、一見異様に思えるようなこともありましたが、だからこそ、とことん自分自身と向き合えたとも言えます。体験してみればわかります。やってよかったと思いますから。そもそも、理念教育を徹底してやろうとしたら、普通じゃダメで、異様なくらいでないと身につかないと改めて思いました」
ギリギリまで追い込まれるからこその到達点
西山正紀さん
プロフィール
にしやま まさのり
ぐるなび出向社員。株式会社テンポスホールディングス広報課勤務。
「テンポスに来る前からテンポス道場の黒い噂は耳にしていたので、案内をいただいたときは『とうとう自分の番がきたか』という諦めに近い感情と、『せっかくなら前向きに挑戦してみよう』という“怖いもの見たさ”のような感情がありました」とぐるなび出向社員の西山さんは語る。
「テンポス道場の3日間は、自分と会話する、自分の心に問いかける時間でもあったと思います。テンポス精神は17ヶ条ありますが、今の私にもっとも響いたのは『モクスケの法則』です。これ、私はおろそかにしていました。特にスケジュールに対して、いいかげんだったように思います」
西山さんは、そこに劣等感を持ち、課題意識をずっと持っていたと言う。
「自分のダメな部分をずばり指摘されたような気がしました。目標を立てて、スケジュールどおりに実行していく、これは本来できて当たり前なのですが、現実は守れたり、守れなかったりで、徹底できていませんでした。今回のテンポス道場で、真正面からこの課題を突き付けられたので、すぐに改善することにしました。会社に戻ったその日にやったことは、予定をずらしてしまいがちな『スマイラー』の編集スケジュールをHotBizに登録したことです」
テンポスが、ものを仕入れて売っておしまいではない商売を目指している根源が、テンポス精神から垣間見えたような気がしたと西山さん。
「第二条の百姓テンポス、儲けろ儲けるなには、商人としての矜持と言うか、お客様に寄りそっていく商人魂のようなものを感じました。この精神こそが、テンポスの強さの秘密なのだろうと思いました。テンポス道場を体験することで、同じ目線、同じ言葉で語り合えるようになります。みんなで同じ方向を向けるようになれば、それは強い企業になるだろうとも思いました。一歩踏み超える力が自然に身につく研修、それがテンポス道場かもしれません」
道場から戻って、返事の仕方を変えたと言う。
仕事を振られたときや、お願いされたとき、ただ、はいと返事するのでなく、いついつまでに、こういうことをやります、と内容と期日を明確にして返事するようにしたのだそうだ。「上司の乙丸課長がびっくりして『返事が変わった! 安心感がある!』と反応したのを見て、しめしめと思いました(笑)。自分にとってもやることとスケジュールが明確になって、意識が強くなりますしね」
こういう小さな変化が、結果的に大きな変化に繋がっていく。テンポス道場を経験した人の小さな変化が大きな波に変わっていく。「まだテンポス道場に参加したことがない人は、ぜひ前向きに考えてみてください。事前準備も含め、大変ではありますが、課題と覚悟を持って臨めば必ず得られるものがあると思います。分かっていないだけで、自分で勝手に限界を作ってしまっていることに気づかされます。それはギリギリまで追い込まれるからこその到達点なのだと思います。いろんなグループ企業の人と、この時間を共にできるのもいいですね。今後にきっと役立つ絆が得られますよ」
少々の壁は乗り越えられる自信がついた
劉 承桓さん
プロフィール
ユ スンファン
韓国出身の39歳。テンポスバスターズ川崎店勤務。
仲間、同僚のありがたさが身に染みたと、テンポスバスターズ川崎店の劉さんは語る。
「練習に付き合ってくれて、いない間のフォローも、何も言わずにやってくれました。もう感謝しかありません」
テンポス道場から戻った後、いろいろなことが変わった。
「今までの私は、目標がありませんでした。あっても本気でやろうとしていなかったように思います。もちろん売上目標はあったのですが、必ず達成しなくてはいけないとまでしっかり考えてはいませんでした。いまは、決めた以上はやろう、やってみようと思うようになりました」
めんどくさいと思って、なんとなく後回しにしてしまっていたことを、すぐにやるようにもなった。
「たとえば、取引企業のカタログなど、古いものが多くなってきたので、新しいカタログを注文しなくちゃと思っていたのですが、後でいいやと、ずっとそのまま放置していました。それを道場から帰ってきて、すぐにそれぞれの会社に発注しました。在庫置き場の掃除も、お客様の目には触れないし、直接売上げには関係ないからと、後回しにしてしまっていたのですが、それもやりました。やればすぐにできることを、面倒だから、すぐに影響が出ることではないからと、後回しにするのは、今後はやめようと思います」
目標をやり切ることができてなかった今までの自分は、自分を大切にしていなかったことに気がついたと劉さんは言う。そう、テンポス精神の第五条だ。
「会社のノルマではなく、自分で決める目標の重要性、そしてそれを達成する方法を自分で考え、工夫していくことの大切さ、そんなことに改めて気づかされました。第十三条で言うところの、0.99の考え方で、私はこれまで生きて来てしまったのではないかとも思いました。これは人生についても同じだと思いました。目標を持たず、無為に生きていたのでは何も成し遂げられないのではないかと。私には、3歳と0歳(120日目)の子供がいます。彼らが、問題なく大学まで行けるよう、しっかり貯金をし、準備することを改めて決意しました」
劉さんは、参加して良かったと笑顔で語る。
「日本人と一緒に、頑張って、突破しようと気持ちを一つにできたのはとてもいい経験でした。日本人と同じ条件で、同じ審査基準で挑戦できたと言うことも、それ自体うれしいことでした」
自分を追い込んでいく経験は、20年前に韓国で軍隊に入隊したとき以来だとも語る。「こういうのは、ぎりぎりまで追い込むからこそ、意味があると思います。その分強くなります。今回味わった達成感は、新たな自信につながったと思います。少々の壁は乗り越えることができる、大変なことはあっても無理なことはないんだと思えるようになりました」