2022年03月23日

教えるのではなく、鍛える

2022年3月度の役員研修が行われました。役員研修は、テンポスグループ会社11社の社長・幹部29名が集まり「人格を高める」「成果を上げる」の観点から行う実践的な研修です。毎月1回行っています。

さて、4月に新入社員が入社します。その時、受け入れる側の私たちは、新入社員に何を教えるべきなのでしょうか。社長の森下の話を紹介します。

適職などない

テンポスに50歳、60歳で中途入社する人がいます。テンポスには定年制がなく、年齢に関係なく意欲と能力のある人には働く場を提供したいと考えているからです。しかし、採用した人の半分は1カ月で辞めます。冬は寒くて、夏は暑い職場。次々に新しいサービスを覚えなければならないスピード感。これに対して「自分には合っていない」と思い辞められる方がいるのです。

しかし、自分に合う仕事とは何でしょうか。20年、30年勤めていた以前の仕事こそ自分に合う仕事と感じている人がいます。しかし、それは長い年月の中で、次第に仕事の面白さを見つけることができたから、その仕事が適職だったと思っているにすぎません。

新卒「自分に合っている仕事をしたい」「面白い仕事がしたい」と言ってきた時、なんと伝えるか。それは「適職は無いよ」です。どんな人も、与えられた仕事にひたむきに取り組むことで、仕事の喜びや、やり甲斐が見つかるんですよ、と教えなければなりません。

新入社員が悩んだ時

明るいところから暗いところに行くと目が慣れて見えてくるように、人間の体は環境に慣れるようにできています。さらにいえば、戦争で襲撃を受け家族が亡くなったとき、家族は大泣きするでしょう。しかし襲撃が1カ月も続けばどうなるか。死体を放置していると悪臭がでるからと、リアカーに死体を物のように投げ入れ、ごみ処理のように死体を片付けていきます。その光景を見た沖縄のタクシー運転手は、「人の死が日常になると、家族が死んで大泣きしていた人も泣かなくなった、人は悲しいことにも慣れてしまうのかと思った」、と話をされていました。つまり、それほどの悲しい出来事にも、人間は環境に慣れる生き物だということです。

仕事を始めれば、辛いこと悲しいこと、たくさん経験します。しかし新入社員が仕事に悩んだ時、「心配ないよ」と伝えてください。マイナスの感情は慣れるように人間の体は作られているからです。極論に聞こえてしまうかもしれませんが、そう思うことが大事なのです。

プラスの感情には敏感であれ

「あの先輩は苦手だな」「営業で失敗してつらい」そんなマイナスな感情には鈍感でいることを教えてください。鈍感になるとは「あとをひかない」ことです。感じないことではありません。そして、マイナスの感情ではなく、プラスの感情に目を向けることも教えます。嬉しいと悲しみは、より合わせた縄のように交互にくるものです。悲しみの感度が高い人は、その感度を下げ、喜びの感度を上げていく必要があります。
ちょっとしたことでも仕事が出来るようになったとき、たいしたことでなくてもお客様が褒めてくれたとき、後輩に教えたことがいつのまにか出来るようになったとき、ささやかな出来事に対して「嬉しい」「ありがたいな」「幸せだな」と思う回数を増やしていくのです。これを幸せの感度を上げるといいます。そのための仕掛けを会社としても取り組んでいきます。

幹部社員に求めること

役員研修の参加者は、なぜこれらを新卒に教えて辞めさせないようにするかといえば、商売という観点で、採用した人が辞めるのは経営効率が悪いからです。新卒一人当たり70万円かけて採用しているのに、辞めてしまっては意味がありません。経済効率を追求する組織だから育てるのです。そのために、新卒には「不幸には鈍感、喜びには敏感」ということをしっかり教えていってください。

また、テンポスは社員を大事にする会社でありたいと考えています。しかし、それはおべんちゃらを言って優しく大事にするのではありません。大事にするとは、「半人前を一人前にすること」です。

半人前を一人前にするときに大事なことは教えるではなく、鍛えるです。新卒はテンポスという“道場”に入った門下生と同じです。「教えてくれないから、覚えられない」等といえば、師匠から竹刀で張り倒されます。新入社員は、「自分を鍛えてくださいね」という姿勢、つまり自らの意志で学ぼうとする姿勢で学ぶように教えてください。素直に学ぼうとする意欲があればあるほど、身に付く力は大きくなります。

金の使い方

「給与5割アップ」を掲げて3年目に入りました。なぜなら経常利益30億が見え始めた今、会社だけが儲けてどうするのだと考えているからです。

社員に幸せになってもらいたいと考えたとき、会社としてどんな仕掛けをすると良いか、この役員研修に参加している幹部は考えてください。今からグループディスカッションをしてもらいますが、このときに考えることは、会社としてどんな考えを大事にするかです。給与を上げたからといって、社員は幸せになりません。幸せとは「年収が上がった」「憧れの歌手に会えた」等、何かを成し遂げて獲得できるものではありません。幸せとは「今日は花がきれいだな」「このどら焼きおいしいな~」等、日常生活においてささやかなことでも喜びを感じられることです。
これを踏まえたうえで、社員が幸せになるために、どんな制度や仕掛けが必要かを考えるということです。
それではどうぞ。

終わりに

「役員研修では、人を育てる、成果を上げる、経営者としての人格を高める等、様々な観点から研修に取り組みます。大事なことは「他社の成功事例を知る」ではなく、事例をもとに、自社でどんな風に取り入れて実行したかどうかです。また取り入れるためには、会社の考えを体得しておかなければなりません。そのためにグループディスカッションを通して、学びを深めていきます。