全社員へ2024年11月27日

お客から「出るとこ、出るぞ!」と脅迫されたとき~飲食店のカスハラ対策とは~

カスタマーハラスメントは年々増加しています。あるラーメン屋では男性客が腹いせに、卓上にある楊枝を全てラーメンに入れ食べずに退店。その後1日に何十回もお店に脅迫電話をかけたりする等の迷惑行為がありました。他の店では、「名前は覚えたからな、お前の店の接客、動画にとってSNSで拡散するぞ」などの脅迫を受けたスタッフが精神疾患になり退職。人材確保が難しくなってきている店舗もあると聞きます。店舗やスタッフを守るため、森下社長、飲食店経営者はどのような心構え、対策を取ったらいいでしょうか?

カスハラから個人を特定されないように、名札に本名を載せない等の工夫している店もあるが、基本的にカスハラの対策方法はない。カスハラをするお客に対して、まっとうな対応をしても相手はモンスターだから解決に向けた対話ができない。だから、個人を特定されないように名札に苗字を載せないように工夫して従業員を守ろうとしても、カスハラはあの手この手で脅迫してくるから、従業員への精神的ダメージを防ぐことはできないよ。そういう意味で「○○をすれば、カスハラを防げる」というような万能な解決策はない。

そもそも「カスハラ」と「クレーム」の違いは、どちらも顧客からの要求や不満を表す行為だが、その性質や目的には明確な違いがある。「カスハラ」は正当な不満を伝えるのではなく、顧客が従業員に対して不適切な要求や暴言、威圧的な態度をとる行為だ。いきすぎた感情をそのままぶつけてきたり、利益を得るためや、相手を困らせることが目的で行われることが多い。反対に「クレーム」は、顧客がサービスや商品に対する正当な不満を伝え、改善を求める行為だ。クレームの目的は、問題を指摘し、より良いサービスや商品の提供を促すことにある。適切なクレームは、企業側にとって改善の機会となり、顧客との信頼関係を強化する手段ともなる。

 違いはどこかというと、“場の限度”を感じられない人。限度を超えた要求すればカスハラになる。そんなお客に対して飲食店で出来る対策はというと「それ以上やるなら警察呼ぶぞ」とドスのきいた声で話す練習をするとか、防犯カメラを設置して録画データを証拠に粛々と対応するとか、客と戦うのが嫌なら土下座してその場を収めるとか。カスハラ対策に答えはないんだよな。客と戦うか、戦うのが嫌なら逃げるか、どの方針でいくか自分で決めて、何がうまくいくかやってみるしかない。

あなたは立ち向かいますか?逃げますか?

飲食店を経営する上で、トラブルが起きた時に個人で立ち向かうか、行政の手助けをもらうか、逃げるか、正解は無いと思っている。

これはテンポスの株主総会の話だが、株主総会中に意地悪な質問をしてきた株主がいた。ファイナンスの専門的な質問を社長の私ではなく、別の取締役に聞くんだ。その株主と懇親会で話す機会があったので、「人を試すように質問するなんて何が楽しいんだ。そんな事ばかりしていたらお前の周りに人がいなくなるぞ」と言ったことがあった。株主に物申すなんて社長の俺だってドキドキする。だけど、会社と株主という垣根を超えて本音で話をすることで、会社はいい方向に向かっていくと思っている。

昔、新卒の父親が会社に乗り込んできたことがあった。その人はとある大企業の取締役をしているオヤジだった。テンポスは困難に立ち向かって工夫改善を繰り返す会社。そして、「我慢する」「辛抱する」「不平不満を言わない」ことを大切にしている会社だ。でも新卒はその環境が辛かったのだろう。職場から逃げだし、オヤジが乗り込んで来たというわけだ。オヤジは「あなたの会社がやっているのは、パワハラだぞ」と言った。それに対して俺は「テンポスではこういう方針のもとでトレーニングをしている、だから子供のいうことを真に受けてテンポスに文句を言ってきてどうする。子供をたしなめる位にしておかないと」と話をした事があった。

クレームに限らず、取引先やお客から理不尽な要求をつきつけられたとき、それに立ち向かい解決を図るか、それとも無理はせず逃げるかどうかは、自分の生き方で決めればよい。なぜなら『立ち向かう』と聞けば、前向きな選択肢のように聞こえるが、裁判を起こして徹底的に相手と戦っても、解決するまでに時間とお金がかかり疲弊してしまうこともある。それなら、無理せずに、相手から言われるがままに対応したほうが、精神的な負担も少ない。だけど、俺だったら立ち向かう生き方をしたい。逃げるのは、その時は楽だよ。だけど対決して解決するということから逃げていると、ありとあらゆることに、ただ耐え忍ぶ人生を送ることになってしまう。どちらを選ぶかは自分次第だが、覚悟を決めて解決に向かい改善していく道を選んで欲しい。

店長は従業員の見方でいろ!

昔、ステーキのあさくまの社長をしていた時、店長会議でカスハラに対して次の対応をするように通達したことがあった。第一に、店長は従業員を守ること。店長が守らずして誰が守るんだということを伝えた。度を超えた要求だと現場で判断した際には、お客として対応しない。お客と言い合いになって「客を何だと思っているんだ」と言われたら、「もう来なくていいです」と言え。「出るとこ出るぞ」って言われたら、「まず、あなたが店から出てください」と言えとね。度を超えた要求に対しては、裁判でもなんでも受けて対応するから、従業員を守るようにと伝えていた。

「お客様は神様だ」という言葉があるが、これは演歌歌手の三波春夫氏が、自分の舞台では客を敬い、心からのパフォーマンスをするという姿勢を示した意味で発したものだ。しかし、この言葉が一人歩きして、お客は神様のように、何でもかんでも丁重に扱わないといけないという意味になってしまっている。我々、商売人はお客は本当に喜んでいるか、常に顧客満足を追求しないといけない。そういう意味で「お客様は神様だ」という考え方は大いに賛成だ。だけど、カスハラするようなお客なら、三波春夫氏だってお客様をたしなめることはあるよ。

困難が成長を促す「ひかるブラック企業テンポス」の考え

波風を受けない人生を送っている人はほとんどいない。波風を受けないのは無期懲役で刑務所にいる人ぐらいだ。テンポスでは「ひかるブラック企業テンポス」という言葉がある。これは、辛くても厳しい環境に身をおくことで、結果的にスキルが早く身に付き、その人の成長に繋がるというものだ。そして、その過程で得られる経験や教訓が、生きる力を養い、次の困難に立ち向かう糧となっていく。辛いと感じたとき、自己防衛して逃げたり、人に訴えたりするのではなく、勇気をもって一歩踏み出す人生を歩んで欲しいと願う。