全社員へ2024年08月09日
厳しい現実を受け入れ、自己鍛錬しろ!自分を厳しく律することでのみ、成長が得られるある企業がM&Aで子会社を買収したが、社員が不正をはたらいているなどの問題を抱えていた。そこで、この問題点を人事面から立て直すべく、親会社より社員を出向させることに。抜擢されたのは営業部で活躍していた社員A君だった。しかしA君はものの1か月で限界だと言い営業部に戻る事になってしまう。『今までやった事のない仕事を次々に任され不安が募っていった。』『私が出来るかどうか、事前に一言、聞いてくれても良いものの、上司が物事をどんどん進めていく。このやり方も合わなかった。』と話すA君。それを上司に言えばよかったのだが、真面目な性格で期待に応えたいと意気込んでいただけに、相談することもできず、体調を崩し人事部を去ったという顛末だ。森下社長、A君はどうしたらよかったのでしょうか?
「良いお医者さんってどんなお医者さんだと思う?」俺のばあちゃんはタバコが大好きで18歳から吸っていたけど104歳まで生きた人だった。医者からは心筋梗塞、脳梗塞の原因にもなるからやめた方が良いってさんざん言われていたよ。たしかに統計上、タバコをやめれば病気のリスクは減る。でも、100歳も超えた年寄りに医者が、「タバコ辞めな!病気になるよ!禁煙、禁煙!」とか言っても、ばあちゃんが聞くと思うわけ?「わたしゃ、タバコを吸った方が元気なんだよ!」と機嫌を損ねて話は終わりだよ。タバコは身体に悪いというのは統計上の話で、タバコを吸っても長生きする人はいるし、吸わなくても早く死ぬ人もいる。だから、統計上の話を個人に当てはめようとするところに無理があるんだ。100歳のばあちゃんには「体に悪いけど、もうこの年だし吸ってもいいよ。」とこっそりいう医者と、統計上の数値や、あるべき姿を言うだけの医者、どっちが良い医者かといったら前者だよ。余命半年の癌患者に「先生、私はあとどれくらい生きられますか。」と聞かれて、「半年ですね。」という医者がいたら最悪だよな。こういう医者は、単に医学を修めた人であって、医者ではないよ。
一人ひとり身体の強さが違うように、生い立ちや性格も違う。そんな中、会社は全社員の一人ひとりの人生を考慮して仕事を割り振りできるわけなんてない。A君のように、営業部で実績があり、やる気のある人材でも、無から有を作るような新規事業や既存事業を改革していくとか、そういう仕事ができるかは、実際にやらせてみないと分からないことが多い。でも従業員は「もっと社員の能力を見極めて人事配置すべきだ」という人が多いんだよな。A君もそのタイプだった。じゃあA君はどうしたらよかったのか。まず挑戦してやってみて、行き詰まったら誰かに聞いて、工夫改善をしていく。これを繰り返すことでしか力をつけていくしかないんだよ。それが出来ないのであれば、辞めるか、もっと細かくケアしてくれる産業医がいるような会社に勤めるしかほかないな。ただA君が仕事をできないダメな人間というわけではない。新しい仕事、新しい環境に耐えられる人の方が少ないんだ。だから辛い状況にも耐えられるように自分を鍛えていくことが大事なんだよ。
話し合う事と耐えることの両方を鍛える大切さ
昔、テンポスになかなか可愛いBという女性がいた。仮に山田恭子としよう。入社3年目で責任者に抜擢され、ある男性社員が山田の所に配属された。しかしこの男性、次第に態度が馴れ馴れしくなっていく。「山田さん」から「恭子ちゃん」と呼び名が変わり、その後もエスカレートし、まるで特別な関係であるかのような振る舞いを取られるようになった。しかし山田は『止めて』とは怖くて言えなかった。そうこうしているうちに限界がきて、俺ところに相談がきたというわけだ。じゃあ、俺がどうしたかと言ったら、まず、山田さんには男性社員にはっきり「嫌だ」と言わせる練習をさせた。その上で、二人を呼び出して話し合いをさせた。俺は何も口出しせず陪審員として同席することにした。山田は声を震わせながら、「このメールは一体どういうつもりですか?」「断っているのに、なぜしつこく誘ってくるんですか。」と問いただし、話し合いの結果、男性社員は地方に異動することになった。セクハラで解雇する事も可能だったが、「近くにいないなら良い。」という彼女の温情からだ。
これは一方的な好意を寄せられて困った話だが、仕事で壁にぶち当たる事なんて日常茶飯事。自分の気持ち、状況を伝える力と耐える力を鍛えることが大事なんじゃないか。上司だって完成されているわけでは無いから、不得意なこともあるし、全ての問題に対応できるわけでは無い。俺もしょっちゅう「これやってみるか?」と、新しい仕事を社員に声をかけるもので、どんどんやらせるとノイローゼーになって会社に来なくなる社員がいる。顔色を見ていれば、ノイローゼー直前かどうか分かるから、「思い切って2週間休め!」と声をかけるけど、真面目な人ほど『大丈夫』と言って仕事を続けてしまうんだよね。そして会社に来なくなる。俺がもっと配慮して強制的に休ませないといけなかった。俺もダメだなぁ…。
部下の顔をいちいち伺いながら仕事なんかしていられない。自分で対応するスキルを身につけることは大事だ。相手に自分の気持ちを言葉にして伝えようとすると不安で緊張するかもしれないが、相手だって同じ人間なんだから、噛みつかれるわけじゃないし、何度も練習し、何度も話してみればいい。何度も繰り返していくと少しづつ出来るようになっていくから。そして小さな努力、工夫改善を繰り返し、乗り越えることによって、成功体験を体感し、能力を発揮できるようになっていく。テンポスという会社はビジネス界のオリンピックで金メダルを目指す会社だから、競争社会で勝ち残るために、社員はどんどん新しい仕事をやらせている。変化が嫌いな社員にとっては、テンポスの仕事はつらいよ。だからうちの会社に合わない奴は早く辞めた方が良い。そのかわり、テンポスには自分が考えられないような活躍の場があって、テンポスに入って色々乗り越えていくと、今までの自分では考えられないような仕事が出来るようになる。規模だとか、量だとか、質だとか、全く違う世界にいく事ができる会社。工夫改善を繰り返していけば、結果はおのずとついてくる。成功するかどうかは自分次第だよ。
森下 篤史