代表取締役

賃金5割アップを目指す

(株)テンポスホールディングス
代表取締役社長

森下 篤史

社内報2020年11月号

テンポスを創業してから23年が経ちました。振り返ると、ただのリサイクル屋が上場できたこと、長年の数字的な夢だった経常利益が10%を超えるようになったこと、足元の数字が順調に伸びる道筋がみえてきたこと、大変嬉しく思います。
また、財務においては、現金預金が78億円(貯金のようなもの)あり、さらにバスターズの株を56億円、あさくまの株を49億円、オフィスバスターズ30億円、これらを合算すると現金同等物は200億円にのぼります。無借金経営で貯金もできて、経常利益も10%を超えるようになったのは、長い間皆さんと一緒に作り上げた成果です。

賃金5割アップを目指す

これだけの経営体制になった今、次にやることは従業員への還元です。売上を上げる、海外に進出する、これも夢の一つですが、今の私の夢は従業員の給料をアップさせていくことです。まずは、3カ年計画で賃金5割アップを目指します。

なぜ“5割”かというと、テンポスのような労働集約型の企業は、人間の手による仕事量が多く、簡単に生産性をあげられるビジネスではありません。そのため、賃金を5割アップするというのは困難なことなのです。

しかし、リサイクルの会社であっても「給料を5割アップしても利益を出すことができる」ということを見本として世間に見せる意義があります。
なぜならテンポスはビジネスサイエンティストだからです。私たちは売上利益を上げて会社の規模を大きくするためだけでなく、国家人類の役に立つために仕事をしています。テンポスが見つけた発明発見・ノウハウは国家人類のためであり、そのノウハウを世の中に立つよう広めていくことが、テンポスの役目です。

つまり、賃金5割アップを目指す理由は、従業員還元と、ビジネスサイエンティストとしての挑戦という2つの理由からです。

徹底して生産性をあげていく

実際に賃金5割アップをどう実現させていくかというと、徹底して生産性をあげていきます。人権費を徹底的に下げて、人手が足りないとうい状況でも回せるようにしていきます。

10年前のバスターズの一人当たりの月間粗利は100万円でしたが、現在は、その2倍の213万円になりました。
しかし、トヨタの能率改善と比べればテンポスの生産性は子供騙し程度です。トヨタのお偉い方がテンポスに来れば、テンポスの一人当たりの粗利もあっという間に500万円にはなるでしょう。現在そうならないのは、トップである私の打つ手が悪いからです。つまり、伝えたいことは、賃金5割アップのためには、生産性をあげて、1人当たりの粗利を2倍、3倍、5倍へとしていかなければならないということです。

社員じゃなくて弟子。上司の心構え・部下の心構え

売上新記録をだしたときの表彰の様子。(左)山城、(右)店長

賃金5割アップは、今より一人当たりの粗利を5倍にしていかなければならないと話しましたが、その道は簡単なものではありません。そのため自分は“社員”ではなく、“弟子”になったと思い修業を積んでください。

弟子が何をするかと言うと、師匠の草履を揃える、師匠が羽織を着ると言ったら後ろでパッと手伝いをする等、キビキビと師匠の手伝いをしながら学んでいきます。どんなに辛い修業でも、「厳しいことをやらされるのは全部自分のため」と思うようでない限り、弟子にはなれません。宮本武蔵の弟子になったのに、「労働条件はどうなっているんですか?」「三度の飯が二度なんですけど」、そんなことを言う弟子はいないでしょう?

自分のわがままなんてどうでもいいなと思って初めて弟子となります。テンポスは産業界で経験したことの無い賃金5割アップをしていこうとする会社です。弟子になったつもりでどこまでやるかは自分次第です。

一方で、上司である師匠は、弟子が辛くて辞めるくらいの教育指導をしていかなければなりません。弟子の顔色をみているようでは育ってきませんよ。
ましてや、自分と弟子は友達ではないのですから、タメ口をきくのはもってのほかです。そういうことも教えないといけません。師匠は、師匠であるべき姿を作りながら、自分の仕事の道を究めていってください。

悲観的な人、マイナス発言する人を減らしていく

師匠と弟子という関係で仕事をしていくこと以外にも、やることがあります。それは、働く環境を良くすることです。

エンジャパンの統計によると、会社を辞める理由の8割はコミュニケーションの問題が原因だと発表されています。「将来性が無い」「専門性が低い」等、どれも退職理由でよく挙げられるものですが、それらは本当の理由ではありません。
給料が低いとは言うものの、生活ができないくらい低い会社はこの世の中にほとんどないからです。そもそもある程度、自分で納得して、ここならと思って入社しますよね。つまり、給料が低いことは、最初から分かっていたのだから会社を辞める一番の理由ではなく、大半は人間関係の問題にあるということです。

人間関係の良い会社で働くこと、これは社員にとって一番大事なことです。テンポスは人間関係が良く、働きやすい会社にしていきます。

では、具体的に何をするかと言うと、会社の中で悪口を言ったり、自分の不平に同意してもらう人を集めて仲間を作るような人を減らしていきます。
みかん箱の中に、腐ったみかんが一つでもあると、その周りが腐っていくのと同じように、コミュニティーの中にマイナスの考え方をする人がいると、それに同意する人が出てきて、結果全体的にマイナスの職場になってしまうからです。
しかし、悲観的な考え方をする人、マイナス発言をする人というのは、本人も好きでそうしているわけではありません。

育った環境の中で、それが染みについてしまっているのです。家に帰っても、友達と会っていてもそういう言い方をしてしまいます。だから治さないと本人にとっても不幸であり、それを改善してやるべきなのです。

そのため、会社は人間ドックと同じで、マイナスな考えをする人には、「あなた、ここが問題だよ」と教えて一緒になって治していきます。
働きやすい職場にするための第一弾として、マイナスのストロークを出す人に対して、そういう言い方をしないようにトレーニングをしていきます。

良い人間関係、働きやすい職場を作っていく

マイナスのストロークを言わない職場が良い会社かというと、そうではありません。良い職場、良い人間関係を作るためには、プラスのストロークが必要です。

朝「おはようございます」と言われた時に、「おはようございます」と単に返すのではなく、「今日も元気がいいね」と言って「おはよう」と返しましょう。
その一言を言うだけで、相手も嬉しい気持ちになります。相手が言ったことに対して、相手が気持ちよくなるような返事ができるようになることがプラスのストロークです。

人を観察していると、悪気なく不満を言う人がいるように、プラスのストロークが自然と出てくる人がいます。そんな人と話していると、会社にいても、飲み屋にいても本当に嬉しい気持ちになります。

このプラスのストロークというのは、何回も何回も練習していれば誰でもできるようになります。そのため、朝礼でプラスのストロークの練習をしているのです。なお、ストロークは貯金ができます。マイナスのストロークを貯めると、それが無くなるまで自分はマイナスのストロークを出し続け、プラスのストロークを貯めれば、プラスのストロークの貯金が無くなるまで出し続けることができます。

プラスのストロークで良い人間関係、働きやすい職場を作っていきましょう。

自分の仕事の工夫改善に取り組んでいく

良い人間関係で働きやすい職場になったとしても、会社が事業として成長していくかは別問題です。そこで、皆さんに取り組んでもらいたいことは、「自分の仕事の工夫改善」です。

各自が自分の仕事の工夫改善を当たり前に思いついて実行できる職場にしていかなければなりません。メモの取り方、ドアの閉め方、電話の取り方、どんな小さな事でも、工夫改善をしましょう。

店長は店長の立場で、マネージャーは、マネージャーの立場で改善をしていってください。「もっと仕事を早くするためには?」「もっとお客さまに喜んでもらうためには?」、そんな考える癖をつけて、一人一人が小さな改善を積み重ねていくことで、会社が伸びていきます。これが出来て、会社そのものが良くなっていくのです。